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捨てずに埋めてSDGs ガクチカに役立つ老舗靴下メーカーとのコラボ ... - ツギノジダイ

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 靴下はいま、3足1000円では満足してもらえず、ここ数年、さらに安価な製品が店頭に並ぶようになりました。メーカーも苦境に立たされ、靴下を地場産業の一つとしてきた奈良県広陵町、大和高田市周辺の企業は大幅な減少傾向にあります。

 そんななか、奈良県広陵町にある靴下製造企業の後藤(正)靴下工場は、後藤政弘社長の母校である大和高田市立高田商業高校の学生と一緒にコラボ靴下づくりを始めました。

 地域商店街の衰退、地場産業の衰退。共に多くの地方都市が抱える2つの悩みに様々な提案をしてきた広陵高田ビジネスサポートセンターKoCo-Biz(ココビズ) では2回目となる高校生企画です。

 今回のプロジェクトは過去にあった女子高生マーケティングの様な短期的な商業活動を目指したものではありません。

 高田商業高校が独自に取り組んでいる プロジェクトでは、レトルトの「すき焼き」を製造、販売しています。百貨店や道の駅などで販売し、関西エリアのコンビニおにぎりの具材にもなりました。

 この「すき焼き」は、高田商業高校で上級生から下級生に振る舞われる伝統の食事で、地元の方々も知る名物の1つとなっています。高校生が製品、商品の企画をし、地域の農産物、特産物の有効活用を考え、また販売まで一気通貫するビジネスモデルをここ大和高田市では実現できています。

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 このモデルを地場産業の靴下で、できないかと考えて、靴下プロジェクトもスタートしました。しかし、ファッション業界のみならず、ブランド同士、企業同士、デザイナー、メディアなど、多くのコラボ企画があふれています。なかには、ブランドのロゴの貸し合いだけで終わってしまうものも見られます。

 しかし、このプロジェクトは、短期的な商業面での成功を目指すのではなく、「すき焼き」のように多方面にわたって理解、認知されるものに育て上げていこうという理念をもとにスタートしました。

 高田商業高校はユニークな高校です。商業高校という専門性を持ちながら進学率も高く、また部活動では野球やソフトテニスの強豪校でもあります。

 この高校では生徒が自由に参加できる「まち部」という活動があります。

 ココビズでは2021年「まち部」と地元青果店の協業「高校生インターンシップ」プロジェクトを企画、サポートしました。

 世界的な消費材企業ユニリーバ社が高校生向けに提供しているインターンシッププロジェクトからヒントを得て、地元商店街の活性化に地元高校生のアイデアを活用してみようという企画でした。

 高校生とのコラボ企画は多くの地域で取り組まれているでしょう。しかし、ココビズが関わることで、筆者がLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループをはじめ、ファッション業界で長年学んできたリアリティのあるブランディングやマーケティングの経験を提供することができたのです。

 今や多くの企業が大学と連携してマーケット分析、新製品開発、自社分析を行っています。しかし、このプロジェクトでは、高校生のうちに企画やマーケティングのリアリティを学ぶことで一足先に実践でき、学校としても受験を控え総合型選抜入試を目指す生徒の「ガクチカ」の1つとして提供できるメリットもあります。

 また、企業側にとっても、実際の購入側の生の声が聞けるというメリットと将来的なニーズのヒントも得ることができます。

 靴下製造元である後藤社長から提示された靴下作りにあたっての決まりごとは、既存ブランドと同じ生分解糸を使用した靴下であることだけでした。後藤(正)靴下工場が販売しているZEROソックスは生分解される糸で編み上げられており、土に埋めると約3年で分解される環境負荷の低い製品です。

 それ以外はまったくの自由でした。当初、生徒たちは女子会用、パーティー用、修学旅行用、合宿用、など用途を明確にしてデザインを決めるという手法をとりました。

 マーケティング的観念で切り込むとすれば、靴下の用途を大々的にアピールしているショップはほとんど目にしません。しかし、仮に彼女たちが言っている修学旅行用(寝る前にみんなでお揃いの靴下をはいた足もとを写真に撮る)のソックスが店頭にあれば、それはアイキャッチなディスプレイに映るでしょう。

 こうした驚きある提案こそ、コラボの醍醐味です。一方だけが得をするのではなく、関わった全員にプラスに働く要素があります。

 SDGsは近年、聞かない日がないぐらい浸透しつつあります。もちろんこの靴下ZEROソックスもSDGsフレンドリーな製品の一つです。

 高校生たちは議論を進めるうちに、靴下ZEROソックスにさらにSDGsな発想を加えたアイデアを出しました。SDGs17のゴールに設定されている色と同色の靴下全17色をつくり、17の目的、目標を靴下で感じる、肌で感じる、意識することで持続可能な社会の実現を目指す「SDGs Socks」 という商品です。

17色のSDGs Socks

 当初の「OO用ソックス」のアイデアも良かったのですが、高校生たちは社会の事も考えていました。親目線で見ているといい意味で裏切られると感じました。

 色が決まれば後は番号をそれぞれにつけ(正確には編み込みで表現されている)、一見ゼッケン付きカラフルソックスといった感じの仕上がりですが、彼女たちのアイデアで足裏(足底面)の見えないところに“Please bury me !” (私を埋めて!)というメッセージが編みこまれています。捨てずに埋めてください、そうすれば廃棄されるごみが減ります、というメッセージをウィットに富んだ言葉でまとめました。

 社会問題を意識しているという事をあからさまに表現するのではなく、何気なく表現しています。購入した人はこの靴下を履くたびに紐づいている環境課題を小さく意識します。そうすれば、日々の生活の中で社会問題を思い出すことが増え、人々の行動に少なからず変化が生まれます。

 こんなサイクルをイメージして作られた製品です。

 今回のプロジェクトは、製造から販売までを一気通貫で実現するという側面も持ちます。これをバックアップしたのが広陵町にある地域商社「なりわい」です。

 「なりわい」は近畿経済局、奈良県、広陵町が支援し設立された地域商社です。ここを窓口に近鉄百貨店奈良店での販売イベントを開催しました。11月23日~29日の1週間、百貨店内にある東急ハンズ売場で、プロジェクトメンバーの高校生が販売応援に入り、来店客に接客をしました。

プロジェクトメンバーの高校生が販売応援に入った「SDGs Socks」 販売イベント

 高校生たちが接客した様子は、地元テレビ局の奈良テレビのニュースでも放映され、製造、販売、メディア露出と商業活動を一気通貫で実現しました。

 今回のプロジェクトは約10ヵ月かかりました。受験を控えながらも高校生にとっては自分たちが携わった製品が百貨店の店頭で販売されるという貴重な体験となり、「ガクチカ」の1つを手に入れました。

 また企業側にとっても自社製品の新たな販路として実験的ではあるがリアリティのあるマーケティングを実施できました。さらに、メディア露出は製品販売するうえで大きな追い風になるため、大きな成果と捉えています。双方にとってwin-winとなった好事例と言えるでしょう。

 新製品開発と販路開拓が結びついている産業支援こそ多くの中小企業が望んでいる事ではないでしょうか?ビズモデルと言われる、私たちが最も得意とするアイデア出しから販路の創造、このパッケージを提供できる産業支援はまだ多くはありません。

 今回のプロジェクトは、世界的企業のプロジェクトをヒントにしました。成功事例をトレースすることはありませんが、ヒントや参考にすることで自身のプロジェクトがより鮮明に具体化できることもあります。アイデア+アクションが無ければ、本当の意味での産業支援にはなりません。

 事業者が実感できる結果が必須で、それこそが産業支援をする意味でもあります。ビズモデルは課題を真正面から解決していこうと考える自治体と組んで伴走型支援をしていますが、今回の事例はまさにアイデア+アクションが実ったものとなりました。

 伴走型支援のため、10ヵ月間、何度も三者で議論を重ね、開発を行い、そして販売して売上を作りました。たった1週間の販売期間ではありましたが、プロジェクトのスタートとしては上々と言えるでしょう。

 これで終わりではなく、下級生に引き継いで定番化していく予定です。今後はSNSを活用して国内向け販路開拓、またインスタグラムの英語化で海外の反応もリサーチすることを考えています。地域企業同士の協業や官民連携など、複合型のビジネスモデルを考えている方の参考になれば幸いです。

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January 04, 2023 at 08:30AM
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