がん患者の心彩る６色のニット帽 「靴下日本一のまち」の技で笑顔 ... - 産経ニュース

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ふっくらとした質感と肌なじみの良い色合いが特徴の医療用ニット帽子

「靴下のまち」で知られる奈良県広陵町の靴下メーカーと、大阪の美容室などがタッグを組んでがん患者向けのニット帽子を開発した。靴下を編む技術を応用してふんわりとした手触りを実現し、顔色が良く見える軽やかな色合いにこだわった。「闘病中でも晴れやかな心で心地よく過ごしてほしい」という願いが込められている。

生産量日本一の技術

開発した医療用ニット帽子を手にするエデュースタイルの専務、平岡利香さんは「やさしい肌触りと色目が持ち味」と話す＝大阪市中央区

きっかけは、美容室経営などを手がける「エデュースタイル」（大阪市中央区）が、平成１８年に関西医科大付属病院（大阪府枚方市）内に美容室をオープンしたことだ。脱毛したがん患者向けにウィッグを販売してきたが、患者たちの声に耳を傾けるうちに「見た目の変化を気にせず明るく前向きになってもらいたい」と考えるように。着目したのが、靴下の生産量が全国でもトップクラスを誇り、１５％を占める広陵町の技術だった。

伸縮性に富み、締め付けすぎない靴下の技術をニット帽子に応用すれば、がん患者にも快適に利用してもらえるのではないか－。そう考えた同社の山縣正憲社長が町産業総合振興機構「なりわい」に相談し、同町の靴下製造業「サントウニット」や同町のパーソナルスタイリングサロン「イイヴィ」と協業することになった。

患者にヒアリング

３社は昨春から帽子作りに着手。手始めに大阪国際がんセンター（大阪市中央区）の患者交流棟内で活動する支援団体「つながりひろば」の協力を得てがん患者にヒアリングしたところ、「気分が前向きになるような華やかな色を身に着けたい」「髪がないと汗がそのまま顔や襟足に流れるので、何とかしてほしい」「ウィッグをつけたいので、こめかみや襟足まで覆うものがほしい」などの声が上がった。

編みあがった帽子を手にするサントウニットの山本聖二社長＝奈良県広陵町

こうした意見を踏まえ、化粧なしでも血色が良く見える色合いにこだわり、通気性のある綿１００％のニット素材を採用。加湿器を稼働させながら靴下の編み機を使って編み上げることで、ふんわりと柔らかな手触りを実現した。今年４月、襟足まで覆う医療用帽子「ＴＳＵＭＵＧＵ（つむぐ）」を完成させた。

製造を担うサントウニット社長の山本聖二さん（４６）は「広陵町の技術ががん患者のサポートにつながればうれしい」。エデュースタイルの専務、平岡利香さん（６２）は「がん患者はつらい治療に加え、脱毛という現実にも直面する。治療中であってもおしゃれをして心豊かになれるような手助けがしたい」と話した。

赤や水色、紫など６色。人気を博し、入荷待ちの色もあるという。エデュースタイル店舗では３５００円、ウェブストアでは４５００円（税、送料込み）で販売している。

９割以上外見に変化

化粧品メーカーの資生堂が昨年５月から６月にかけ、日本や米国、ドイツなど世界８カ国でがん経験者の男女１３５０人を対象に実施した外見の変化に関する意識調査では、９３・９％が肌の色の変化や脱毛など何らかの外見の変化を体験。８４・９％が「気持ちが落ち込んだ」「物事に消極的になった」などと、気持ちや行動に影響が出たと回答した。

過去に乳がんに罹患（りかん）した大阪のスタイリスト、谷山伸子さん（６１）も、療養中は帽子やウィッグを着用していたといい、「見た目がすてきで、身に着けると心がワクワクするものを選んでいた」と振り返る。その上で、「患者にとって、元気になるようなアイテムの選択肢が増えることはとてもよいこと」としている。（木村郁子）

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October 23, 2023 at 09:00AM
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