将棋の第34期竜王戦7番勝負第3局は31日、福島県いわき市の「新つた」で第2日を指し継ぎ、先手番の挑戦者・藤井聡太3冠(19)=王位、叡王、棋聖=が93手で豊島将之竜王(31)を下した。これで藤井は開幕3連勝。初の竜王位、さらに史上最年少4冠にも王手をかけた。
結果的には藤井の横綱相撲かもしれない。だが終盤の入り口まではどちらに形勢が傾いても不思議ではない複雑極まる力戦だった。
中盤に浮かした飛車を標的に迫られた場面で「少し苦しくなった」とうめくように振り返る藤井。それでも勝負どころで右辺に細かいジャブを効かし、わずかな秘孔に角をねじこんでリードを奪う。最後は左辺からも大駒小駒のコンビネーション。仕上げは万全だった。
豊島とは6~8月の王位戦7番勝負、7~9月の叡王戦5番勝負に続く「タイトル戦19番勝負」の真っ最中。王位戦は4勝1敗で、叡王戦は3勝2敗で、いずれもシリーズを制した。昨年までは初対決以来6連敗と大の苦手だった相手に、気がつけば5連勝。通算成績も11勝9敗となり、均衡状態から頭ひとつ抜け出た感もある。
棋界最高峰タイトルに最短で王手をかけたにもかかわらず、藤井は「本局は考えても分からないところが多く、判断力がまだまだ足りない。それを少しでも修正していい状態で次に臨みたい」と楽観のそぶりすら見せなかった。
第4局は12、13日に山口県宇部市で行われる。その前の5日には第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグでも豊島と対戦する。ホッとしている時間はない。
《豊島竜王ガックリ》投了直前の豊島は魂が抜かれたように肩を落としていた。一局を通じ「基本的に自信がなかった」と明かし、藤井の迫力ある終盤の角打ちに「打たれて厳しいと思いました」と苦しい心境を口にした。3連覇を狙う立場で迎えた今シリーズだが、あっという間にカド番に。「一局でも多く指せるようにしたい」と自らを奮い立たせていた。
《NHK杯は深浦九段に黒星》竜王戦の熱戦が繰り広げられていたこの日、NHK杯2回戦の藤井VS深浦康市九段(49)が放送され、後手の藤井は95手で敗れた。5月には王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦でも敗れるなど、深浦にはこれで通算1勝3敗。NHK杯も5度目の挑戦で2度目の初戦敗退だ。史上最年少3冠とて無敵ではない。
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