童話「シンデレラ」で主人公シンデレラが履く「ガラスの靴」。王子と結ばれるためのキーアイテムで、物語のシンボルとなっている。幼いころに夢見た人も多いのではないだろうか。
そんな憧れのガラスの靴を販売している会社が京都市内にある。1915年創業の「はせがわガラス」(中京区)。ショーウインドーにはさまざまなデザインのガラスの靴が並び、どれも実際に履けるというから驚きだ。
「『ガラスの靴を作ってみたい』という職人は多い。でも、けがを怖がってタブー視されていました」と社長の長谷川豊さん(71)。ガラス製品の修復を請け負う中で、ガラスの強度の限界点を見極める技術を会得し、実現できたという。
「作ってほしい」という依頼は以前から多かったが、コストの高さからなかなか踏み切れずにいた。転機は2001年。ホテルのキャンペーン向けの注文が入ったことから3個制作。翌年にホームページ上で注文の受け付けを始めた。
オーダーメードの商品で、足の形を測ったり、履いている靴を郵送してもらったりして一人一人に合わせて作る。デザインも多種多様で、ピンクやエメラルドグリーンといった色にしたり、レースのような模様をあしらったりすることもできる。トウの形やヒールの高さの指定も可能だ。
「強度の限界点が分からないと危ない」として歩行は禁止しており、基本的に右足用のみ販売している。1個約10万円から。
ガラスの靴はこれまで数々の企業のイベントやCMなどに華を添えてきた。
篠原涼子さん主演で2013年に放送されたフジテレビ系連続ドラマ「ラスト・シンデレラ」のオープニングやエンディングにも使われた。ガラスの靴で足が圧迫されて変色しないように、篠原さんの足のサイズより少し大きめに製造したという。
購入者は企業だけではない。結婚式の演出、誕生日やプロポーズのプレゼントなどに注文する人もおり、多いときは年間60個を売り上げた。
ロマンチックなガラスの靴。履き心地はどうなのか。展示品を履かせてもらった。
通常の靴のように伸縮性がなく、足の形に合わせて緩やかにカーブしているため、履くときに無理な力を入れて割ってしまうのではないかと少し緊張した。「足首を回すように入れてください」と長谷川さんに促されてつま先を差し込むと、案外、すんなりと履くことができた。
ガラスの靴はひんやりとしていた。軽く足を持ち上げてみると、約500グラムという重さをずっしりと感じた。誤って落として割ってしまうのではないかとまた心配になり、慌てて足を下ろした。
長谷川さんによると、ガラスの靴は歩いた途端に割れるというものではなく「足を前後に動かすくらいなら基本的に大丈夫」。しかし、歩こうとしてつま先に力を入れると負荷がかかり割れやすいという。また、反ったりねじったりすることができないため、転倒しやすく捻挫などのけがにつながる危険性も。
シンデレラが実在していれば、ガラスの靴で舞踏会に参加することはできなかったかもしれない。長谷川さんは「この危うさがまた、女性を引きつけているのかもしれませんね」と話していた。
June 27, 2021 at 02:00PM
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シンデレラは実は踊れなかった? 「リアルに履けるガラスの靴」試してみたら|まいどなニュース - 神戸新聞社
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