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びしょ濡れで行き倒れていた地域猫、「もう治らない」向き合った“緩和ケア”と別れのとき - ORICON NEWS

 猫を保護したときの状況を、ブログでリアルに伝えているNPO法人『ねこけん』。ときには悲惨すぎる写真も掲載されるが、それにより多くの読者に動物愛護の必要性を問いかけている。公園で行き倒れた猫「いがちゃん」は、保護され『ねこけん』で暮らしていたが、その後ほどなくして亡くなった。地域猫の現状、病気の猫の緩和ケアについて、代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。9月20日〜26日は動物愛護週間。これまで特に反響の大きかった記事を再掲します。

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■「もうダメだ」諦めからの復活、一命をとり取り留めた地域猫

 「猫がびしょ濡れで倒れているんです」

 そう言って、通りすがりの人が事務所に駆け込んできたという。その日は雨。「低体温になっている可能性があるので、温めるためにドライヤーを用意して事務所で待機していました」と、溝上氏は当時を振り返る。しかし、現場に赴いたメンバーから送られてきた猫の写真を見るだに、「もうダメだ」と半分諦めに近い気持ちだったそうだ。ブログに掲載された写真を見ると、確かに死んでいるようにしか見えないが、かすかに息がある。事務所へ搬送して必死にドライヤーで温めるも、体温が低すぎて体温計でも測れない状態。痙攣が起きたためにタオルを口にくわえさせ、なんとか命の危険を乗り越えた。

 意識が戻ると、猫はヨロヨロしながらも美味しそうに“ちゅ〜る”を舐めた。この猫は井頭公園近くで行き倒れていたことから「井頭(いがしら)12:50」、通称いがちゃんと命名された。

 一命を取り留めたいがちゃんだが、さらに過酷な運命が待っていた。「口の中に腫瘍があることがわかったんです。扁平上皮癌というもので、『もう治らない』と獣医師から言われて。あとは看取ることしかできませんでした」。

 いがちゃんの未来が判明してからは、「みんなにいがちゃんを覚えてもらうために」と、いがちゃんのいろいろな表情をブログに載せた。その名も、『いがちゃんチャレンジチェック』。

 そこには、口の周りをちゅ〜るで汚して得意げな顔、メンバーに抱かれて楽しそうな顔、清潔なベッドでゆっくりと眠る顔など、様々ないがちゃんの写真がアップされた。そして、それらとともに、いがちゃんとの“会話”が書かれている。

<それにしても、もっとゆっくりしていけば良かったのに…。
 いが「そう?でも、猫神様に呼ばれてたから」
猫神様も、カッコイイいがちゃんに早く会いたかったのかも…。
 「やっぱり? うふふ、いがちゃんだもの」
ああ! いがちゃん、そういえば、よくちゅ〜るを手ですぐって食べていたよね。
 「うん。大好き」
メンバーさんからも、いがちゃんを応援してくれた優しい人たちからも、たくさんご飯やオヤツをいただいたよ。
 「エヘへ、ありがとうね」>
(ねこけんブログより)

 「いがちゃんは本当にちゅ〜るが大好きでした。もう治らないとわかってからは、栄養よりもいがちゃんが食べたいものをあげて、緩和ケアだけを考えたんです。最後は穏やかに亡くなりました」。

 奇しくも、いがちゃんは『ねこけん』で長らく保護していた猫・彦爺と同じタイミングで旅立った。彦爺はもともと、13年間も真っ暗な押し入れの中で飼われていた猫で、明るいところでは涙が止まらなかったのだという。『ねこけん』設立初期に保護し、20歳を超えて生き、大往生を果たした。

 「猫ちゃんが亡くなるとき、バタバタと相次いで逝ってしまうことがあるんです。季節的なものもあるんでしょうね」。ブログには、一足先に虹の橋のたもとでいがちゃんを待つ、彦爺の姿がイラストで描かれていた。

 いがちゃんを保護して、わずか1ヵ月後のことだった。

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