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第37回織田作之助賞は温又柔さんの「魯肉飯のさえずり」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

温又柔「魯肉飯のさえずり」(中央公論新社)

  第37回織田作之助賞の選考会が9日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、温又柔(おんゆうじゅう)さん(40)の「魯肉飯(ロバプン)のさえずり」(中央公論新社)が選ばれた。同作は日本人と結婚して台湾から移住した母とその娘の物語。時間を行き来しながら娘と母の視点で交互に語られ、結婚や家族、幸せをめぐる「ふつう」を問いかける。

温又柔さん=中央公論新社提供

 記者会見で、選考委員の作家、高村薫さんは授賞理由について「母子の普遍的な緊張関係や葛藤をいろんなエピソードで非常にうまく描いている。(候補作の中で)一番地味で平凡な物語だが、人間の感情の流れで一つの世界をつくりあげた、小説らしい小説」と話した。

織田作之助賞選考会で意見を交わす選考委員ら=大阪市北区の毎日新聞大阪本社で2020年12月9日、大西達也撮影

 温さんは台湾出身で3歳から東京在住。2009年、「好去好来歌(こうきょこうらいか)」ですばる文学賞佳作を受賞し、作家デビューした。受賞の知らせに「この小説は異国で子育てしているお母さんたちにささげた物語です。こうして評価してくださってうれしく思います」とコメントした。

 同賞は織田作之助賞実行委員会(大阪市・大阪文学振興会・関西大学・パソナグループ・毎日新聞社)主催、一心寺・ルーブル書店協賛。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は来年3月に催される予定。【清水有香】

温又柔さん

 1980年、台湾・台北市生まれ。3歳の時に家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育つ。2009年「好去好来歌」ですばる文学賞佳作を受賞。16年「台湾生まれ 日本語育ち」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。著書に「来福の家」「真ん中の子どもたち」「空港時光」、エッセー集「『国語』から旅立って」、木村友祐氏との共著「私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ」など。

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