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脱げない靴下をつくりたい―と考案した「はかないくつした」が話題 逆転の発想はどう生まれたのか - 沖縄タイムス

kutsu.prelol.com

[菊地央里子,ITmedia]

 「靴下のかかとが脱げやすいなら、いっそなくせばいいのでは?」――そんな思い付きから生まれたのが、ナイガイ(東京都港区)の「はかないくつした SUASiC(スアシック)」(1足880円)だ。靴に装着することで、素足でも靴下を履いた時のような足元の快適性を提供する「はかないくつした」。“靴下なのに履かない”という逆転の発想を形にしたのが、同社の遠藤裕治さん(商品部門技術開発部開発課)だ。

「はかないくつした SUASiC(スアシック)」(プレスリリースより引用)

 「はかないくつした」は写真の通り、靴下のかかとやつま先部分をなくした、まるでインソールのような形をしている。使い方も、その日履く靴にすぽっと入れるだけ。靴の形に合わせてカットすることも可能で、靴からはみ出すこともない。1日履いた後は、洗って乾かせば何度も使うことができる。

「はかないくつした」とは?(同社提供)

 その形状はインソールとほぼ同じだが、ポリエステルやナイロンなどでできているインソールは、足が汗で蒸れる・滑るといった欠点がある。しかし、「はかないくつした」は、靴下と同じ素材でできているため、汗を吸う、滑りを抑えて歩きやすくなるなど通常の靴下を履いた時と同じような足元の快適性を維持するという。

インソールとの違いは?(同社提供)

人気トレンドは短い靴下

 そもそも「はかないくつした」が生まれた背景には、靴下業界のあるトレンドがあったという。「ここ10年、靴下はどんどん短くなっています。今では、スニーカーを履いた時に、外から見えないような短いものが人気です」(遠藤さん)

どんどん短くなっている靴下(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 見た目はすっきりとした短い靴下だが、その半面“脱げやすい”という難点がある。これを解決するためにかかとの部分に滑り止めを付けるのだが、滑り止めと素足が擦れて痛くなる・かゆくなるなど肌トラブルが起きやすくなっていた。

従来の短い靴下の問題点(同社提供)

 かといって素足で靴を履くのは不快感が大きい。そのため、靴下メーカーは、見えなくて脱げない靴下の開発競争に追われていた。しかしある時、遠藤さんはふと思ったという。

 「靴下のかかとが脱げやすいなら、いっそなくせばいいのでは?」――遠藤さんの試行錯誤が始まった。

開発担当者の遠藤裕治さん

利便性とファッション性を両立

 前述の通り、「はかないくつした」の形はインソールとほぼ同じ。洗えるインソールもあり、わざわざ靴下であることにこだわる必要はないのでは? 「確かにそういったインソールもありますが、素足で履いた時の快適性はあまり高くありません」(遠藤さん)。目指したのは、インソールと靴下、それぞれのいいとこどりだ。

 「はかないくつした」は、“リンクス編み”という編み方で作られた靴下と同じ生地を使用している。綿(グレーの糸)とナイロン(黒の糸)の2種類の糸で編み立てており、綿は抗菌・防臭加工を施し、汗を吸って足元を快適に保つ、ナイロンは足が滑らないようグリップの役目を果たしているという。

靴下と同じ生地を使用(同社提供)

靴下と同じ生地なので吸水性が高い(同社提供)

 裏面には、「はかないくつした」と靴を密着させるためにクラレの高分子樹脂シートを貼り付けた。「この加工を施すことで滑らなくなるのはもちろん、歩く時の衝撃を約30%吸収するので足が疲れにくい効果もあります」(遠藤さん)

クラレの高分子樹脂シートで靴に密着(同社提供)

歩く時の衝撃を約30%吸収(同社提供)

 選ぶ楽しさを提供するため、カラー展開も工夫した。「同じ靴でも靴下が変わるだけで印象が変わりますし、靴下をコーディネートのアクセントにしたりもしますよね」(遠藤さん)。ファッションアイテムとしても使えるよう、黒やベージュといったベーシックカラー以外に、あえて靴を脱いだ時のアクセントにもなるような明るいカラーを選んだ。

アクセントになるような明るいカラー展開(同社提供)

開発で一番大変だったこと

 「はかないくつした」は、靴のサイズに合わせてカットすることができ、洗濯してもふちがほつれないようになっている。遠藤さんによれば、ここが一番苦労したポイントだという。「カットできる、靴下のように毎日洗える、これらの機能を生かすためにも、ふちのほつれは絶対に解決したかったのですが、なかなかうまくいきませんでした。糸の太さや編み方の試行錯誤を繰り返しました」(遠藤さん)。ようやく形になった時には、思い付いてから2年以上が経過していた。

写真キャプション(同社提供)

 2年をかけて商品化した「はかないくつした」は、5月27日~7月3日にクラウドファンディングを実施。募集目標金額を上回る支援を集め、8月には直営店やECサイトでの一般販売に踏み切った。9月には特許を取得し、来年春には量販店などでも本格販売を開始する予定だ。

 購入者からは、「素足で履きたくなくて困ってた」「靴下が苦手なのでうれしい」など好評を得ている他、意外な事実も分かったという。「私たちの予想では、パンプスやローファーといったかかとが覆われている靴で多く使われるかと思っていました。しかし、実際にはサンダルやミュールなどかかとのない靴に積極的に使われていました」(遠藤さん)

サンダルやミュールに合わせる人が多い(同社提供)

 その一方で課題も見つかったという。「現在展開している『はかないくつした』は、その性質上、革靴や紐靴には不向きです。今後は、全ての靴に合わせられるよう改良を進めていきます」(遠藤さん)

靴下はわざわざ履くもの

 ナイガイは2020年に設立100周年を迎えた。老舗企業でありながら、新しいアイデアや商品づくりへの意欲は衰えない。「失敗することも、時間がかかることも当然あります。ですが、思い付いたことはどんどんやっていこう! という雰囲気が社内にはあります」(遠藤さん)

 そういった思い付きから生まれた、履きやすさを追求した「親指セパレート5本指ソックス」や高齢者向けにはきぐちを柔らかくした「みんなのくつした」は、同社のオリジナル人気商品に成長しているという。

親指セパレート5本指ソックス(同社提供)

みんなのくつした(同社提供)

 「靴下は“わざわざ”履くものです。それならば、ちょっとした不満を解消したり、毎日の生活を快適にするような、つまり“わざわざ”履きたくなるような存在でありたいし、そういった商品をこれからも作っていきたいです」(遠藤さん)。「はかないくつした」が踏み出す次の一歩に注目だ。

わざわざ履く靴下を、より快適に(同社提供)

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October 17, 2022 at 05:00AM
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1040122

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