八王子市の女性用靴店「うさぎや」は、販売員が客の足の形を見極め、合う靴を選んでいる。「体形を見ると、十メートル先からでも足の形は分かりますよ」。足の骨の出っ張りや幅、土踏まずの長さ、かかとの形−。「五、六年勤めれば、85%は正しい靴を選べるようになります」
「痛くない靴」を選ぶ。ここに至るまでの道のりは決して平坦(へいたん)なものではなかった。大学を卒業し、二年ほど関西の小売店で働いた。その後、実家の靴店に戻る前に小売業者の米国視察ツアーに参加。現地で大人向けにスニーカーを販売していることに衝撃を受けた。一九七〇年代、日本では「ズック」や「運動靴」として子どもが履いていた。
「日本でも大人に向けた商品を売れば、人気が出るのではないか」
その直感は当たる。七七年、米国で買い付けたスニーカーを販売する店を出した。最初は値段の高さから敬遠されたが、次第に若者たちに浸透。都心からわざわざ八王子に買い求めに来るほど注目を集めた。当初、買い付けは年二回だったが、毎月渡米することに。「売れれば売れるほど、日本が豊かになっていくのを実感した」
この成功を大手は黙って見ていなかった。チェーン展開する靴店が大量に仕入れた商品を安価で販売するようになり、自分の店からは徐々に客足が遠のいた。バブル崩壊が追い打ちを掛け、「価格破壊」によりスニーカーの価格はさらに下落した。
従業員と半年ほどかけて将来を語り合った。どうすればいいか−。その時に目を向けたのが、女性の社会進出だった。
来店した客がこぼしていた。「四、五時間ほど立ちっぱなしの仕事でつらい」と女性看護師。「都心まで通うのが大変」とため息をつく女性会社員。「靴のプロの自分たちなら、働く女性に向けた『足が痛くならない靴』を売れるのではないか」。全員一致で、女性に向けた靴を販売することになった。
靴を作る職人とは、何度も話し合い、飾りの位置や足の甲にあたる部分の素材の堅さ、ゴムの強さ、靴底の厚さなどを話し合った。来店客に靴を履いてもらい、感想を聞き、また、靴職人に要望して改良する−。そんな地道な作業を長年繰り返した結果、多くの女性の足の形を学び、対応できるようになった。
今では北海道から沖縄まで、「痛くない靴」を求めて来店してくれるようになった。「売れればいい」ではなく「履く人のために誠意を尽くす」。転機に学んだ教訓だ。 (布施谷航)
<うさぎや> 1998年に開業。当初は男性用の靴も販売していたが、女性向け商品に特化。自分の身をていしておもてなしの心を示したウサギの伝承が由来。俳優の故・樹木希林さんが、亡くなる4カ月前にカンヌ映画祭で履いていたのも、うさぎやの靴だった。現在、八王子のほか、吉祥寺、横浜に店舗を構える。問い合わせは、八王子市の本部事務所=電042(644)0222。
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September 28, 2020 at 04:43AM
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<ひと ゆめ みらい>「痛くない靴」見極める技 女性用靴店「うさぎや」社長・小俣能範(おまた・よしのりさん)(71)=八王子市 - 東京新聞
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