全国の川の活動体験の指導者の方が感じたヒヤリハット第一位は、「滑る」です。
川には苔があるので、滑りやすいです。水難事故にならなくても、「滑る」を体験された方はいるのではないでしょうか。
渓流などの「釣り用」として、また滝を登る沢登りのための「アウトドア用」として、滑らない靴が販売されています。既製品を購入するのが安心です。ただ、子ども用や女性用にサイズがない場合もあるので、私は自分で作っていました。自作の方法も昔から釣り人やアウトドア人に受け継がれてきた方法です。
フェルトの選び方
ポイントはフェルトを靴底に貼る事です。川には水があり、流れがあり、苔もあるのでそのすべての条件の中で摩擦を保つもの、それがフェルトです。
フェルトは、手芸用でも販売されていますが、2ミリ程度と薄いので、川遊び用に使うと1日で破れてしまった経験があります。これに対し、釣り用具店の専用のフェルトは1センチ近い厚みがあり長く使えます。ただ、厚みがあると子ども用サイズにカットするのが大変でした。そんな中、加工しやすかったのが、冬用のあったかインソールのフェルトです。5ミリ程度の厚みがありお値段も数百円と手頃です。冬用のグッズですが、夏でもネットで購入できました。
本体の靴はネオプレーン生地で
フェルトを貼る本体の靴は、ウエットスーツ素材(ネオプレーン生地)のマリンブーツ(ウォーターシューズ)がおすすめです。
ネオプレーン生地だと脱げにくい
写真は、スリッポンタイプですが、小さな子は、マジックテープがついていて、ジャストサイズに調節できる脱げにくいものがおすすめです。
川で靴が脱げるとそれを追いかけて溺れるというケースもあります。脱げない靴であることが重要です。ビーチサンダルは脱げやすいので川では使いません。
ネオプレーン生地だと砂礫が入りにくい
サンダルの中には、水抜き穴がついていて、足首が固定できる脱げにくいタイプもあります。また、メッシュタイプの水遊び用運動靴もあります。でも、川では、細かい砂礫が穴から靴の中に入ってきます。砂礫をとるために靴を脱いだ際、靴が流されることがあります。取りに行こうと深みにはまり溺れたり、片足をあげたところで、バランスを崩して流されることもあります。ネオプレーン生地のものは、砂礫が入らないので、川の中で遊んでいる最中、靴を脱がずにすみます。そのため、靴が流されて溺れるという事態を未然に防ぐことができます。
ネオプレーン生地は浮力と保温性がある
ネオプレーン生地の中には気泡があり、それぞれが独立しています。この気泡が浮力になり、断熱材にもなります(動かない空気層は自然界最強の断熱材だから)。流れる水は足が冷えてくるので、保温性のあるネオプレーン生地は嬉しいです。
ネオプレーン生地だとつま先や足を守ることができる
河原へのアクセスは石も多く、爪をはがしてしまうケガにつながります。マリンブーツだとつま先を守ることができますし、ネオプレーン生地は厚みもあるので、ガラス破片やバーベキュー残骸の貝殻(帆立の貝殻などが川に落ちている時もあります)など鋭利なものによるケガから足先を守ることができます。
ネオプレーン生地のデメリット
いいことづくめに思えますが、デメリットもあります。ウェットスーツという名の通り、ネオプレーン生地は、肌との間に水膜をつくるので、陸にあがると、重さを感じたり、水がしたたります。履いたままコンビニに寄ると、お店に迷惑をかけてしまいます。行き帰りは、別のサンダル等が必要になるので、荷物が増えるのがデメリットです。
フェルトの貼り方
本体の靴を選んだら、フェルトにあわせて油性ペンで型取りします。
型をとったフェルトをはさみで切ります。ペンの内側を切ると、貼った時にきれいです。
接着剤を準備します。マルチにすべてのものに接着できるタイプよりも、布とゴムが接着できるタイプがおすすめです(その方が値段もやすいです)。理由はのちほど説明します。
靴底と、フェルトの靴の底面にあわせた内側の部分に接着剤をヘラでうすく伸ばします。
フェルトを靴の裏に接着します(接着剤によっては乾いてからの接着など、数分置いてからの接着になります)
フェルトを貼った靴をポリ袋の中に入れて、重石をして一晩おきます。クルマのタイヤで一晩踏んでいるという釣り人もいました。この時、写真ではわかりやすいようにポリ袋に入れていませんが、ポリ袋に入れると、接着剤がはみ出してきても安心です。マルチに接着するものだと、ポリ袋まで接着してしまうのですが、布、ゴム用のものは、ポリ袋は接着しないので、取り出す時に剥がしやすく便利です。
一晩、重石をしてしっかり接着されていたら使えます。
親子向けに靴作りのワークショップも実施したことがありますが、川で滑らないということは、こんなにも快適なのかと驚かれます。鮎釣りの人が長い竿を持って水中で踏ん張っていられるのも、こんな靴があるからなのです。ロープを使って滝を登るなんて、ありえないと思われがちですが、フリークライミングシューズと同様に摩擦を味方につければ、滝だって登れてしまうのです。川遊びに行く際は、クルマのシートベルト着用と同様に、ライフジャケット をつけたうえで、滑らない靴の工夫もお願いします。
川遊びの靴から水害時の靴を検討する
川という流れがある場所で、滑らない靴を体験したら、水害時の靴の事も考えていただければと思います。水害時、長靴の高さよりも深い浸水があると、長靴に水が入ります。そのため、そんな水位ではもちろん長靴はNGですが、その時、「ひも靴は○」と勘違いして覚えないでほしいのです。ひも靴はいつも○ではありません。
水遊び専用の靴がないのであれば、ひも靴を履くしかないですが、水害時は気温が下がる場合もあるので、濡れると低体温症になりやすいです。また、水専用の靴ではないので、マリンシューズよりも歩きにくいです。遊ぶために事前に川遊びシューズを作っていたら、そちらの方が水専用の靴なのでおすすめです。
ただし、絶対に間違ってほしくない、靴の選択よりも大切な事は、そもそも浸水した状態で水の中に入っての避難は危険ということです。
川の氾濫や決壊が起こった場合、流れが速い場合があります。熊本県球磨川の氾濫流は秒速3メートルに達したところもあります。
家屋も倒壊する流れに対し、人が歩けるという幻想を持つべきではありません。早めの避難こそが重要です。また、浸水したら上の階に垂直避難を検討します。浸水しているというのに、それでも外に避難するというケースは、どんな状況なのか、しっかり想像してみてください。そもそも外の避難も危険になっているケースも多いのです。ひも靴だったら大丈夫ではもちろんありません。どんな靴でも危険です。本当はもっと早く別の場所に避難しておくべきだったケースです。「浸水していても、ひも靴があるから大丈夫」と勘違いされている方にも出会います。逃げ遅れにつながるので気をつけていただければと思います。
自然を相手にするときは、いわゆるマルバツ思考だと、本末転倒の行動につながることがあります。日頃から自然に親しんで、自然の仕組みを知って、臨機応変に対応していただければと思います。
August 15, 2020 at 09:49PM
https://news.yahoo.co.jp/byline/andorisu/20200815-00193503/
川遊びヒヤリハット第1位は「滑る」。滑らない靴作りと水害時の避難を考える。ひも靴が ではないワケ(あんどうりす) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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